
長野県青木村にある青木村郷土美術館は、国宝・大法寺三重塔の壁画復元画や、村にゆかりのある作家の作品を収蔵する文化施設です。
これまでは、写真の雰囲気が硬く感じられたり、喫茶室の魅力が既存の案内に反映されていなかったりと、本来の居心地のよさが伝わりきっていないことが課題でした。また、近くにある大法寺には多くの観光客が訪れているものの、そこから美術館への流れをうまく作れておらず、来館者を増やす方法を模索していました。
そこで、ただ施設を紹介するだけでなく、日々の忙しさから離れてひと息つきたい方に向けた場所として、2種類のリーフレットを企画・制作しました。
プロジェクトの開始にあたり、まずは美術館によく来られる常連の方や、理想のお客様へのインタビューを行いました。どのようなきっかけで施設を知り、何に価値を感じて来館されているのかを丁寧に整理するためです。
その結果、近隣の田沢温泉や沓掛温泉から足を延ばして来館される方が多いことや、地域の内外から週末や仕事終わりに訪れ、アートに触れる時間だけでなく、青木村までのドライブの風景、喫茶室から眺める景色の中でほっと一息つける時間に魅力を感じていることが見えてきました。
こうしたお客様の価値観をもとに、リーフレットの内容だけでなく、温泉街や周辺施設など「どこに設置・配布するか」という届ける導線まで含めて全体の設計を進めました。


大型の美術館とは異なる、こじんまりとした居心地のよさを活かし、それぞれのリーフレットに異なる視点を用意しました。
自然豊かな青木村の魅力をベースに、リフレッシュできる時間を表現しました。喫茶室の案内では、四季の移ろいや窓からの光が伝わる写真を重視し、雑誌のような構成にすることで、夕方に少し立ち寄りたくなる居心地のよさを伝えています。

1枚で2つの案内を叶える折り方:
全体リーフレットは、折る方向によって内容が切り替わる構成にしました。これにより、アートに関心がある層にも、カフェ空間を求める層にも、1枚の紙の中で情報が混ざらずに魅力を届けることができます。
大法寺からの来館を促すため、今見た国宝の内側を見られる場所がすぐ近くにあるという事実を分かりやすく伝えました。お寺の静けさと、館内に展示されている色鮮やかな壁画復元画のギャップを楽しんでもらえる構成にしています。

限られた素材を活かすシンプルなデザイン:
常設展のリーフレットでは、手元にある画像素材が少ないなかで、最善の見せ方を模索しました。落ち着いたレイアウトをベースに、壁画の色鮮やかさが引き立つよう、フォントの太さや余白のバランスを細かく調整しています。
リモートでのやり取りが基本となるなかでも、仕上がりのイメージにズレが生まれないよう、実物を確認できる進行を心がけました。









完成したリーフレットを手にした担当者様が、すぐに設置に向けて動き出してくれるなど、物をつくるだけでなく次の行動に繋がるお手伝いができました。
新しく整えられた案内が大法寺や地域の拠点に置かれることで、これまで美術館の魅力に気づいていなかった人々との新しい接点が生まれます。静かな空間でアートに触れ、景色を眺めながら喫茶室でコーヒーを楽しむ。そんな、訪れた人の心が豊かになるような、地域に愛される循環のきっかけとなることを目指しています。
「リーフレットを見て、行ってみたいと思えるものにしてほしい」とお願いしていましたが、その効果を実感しています。実際に、三重塔を訪れたお客様が増えました。 また、美術館と喫茶室のリーフレットも、単にメニューなどを載せるのではなく、ここで体験できることや、その人なりの過ごし方ができることなどが伝わるものになったと思います。ありがとうございました。
青木村郷土美術館 担当さま

