概要
プロジェクト概要
- クライアント:信州昆虫資料館(長野県青木村)
- 支援内容:施設のアイデンティティ再定義、およびロゴ・ビジュアルシステムの開発
この実績のポイント
- 人蟲共生を掲げたアイデンティティの再定義: 本屈指の標本数を誇る価値を、単なる展示物としてではなく、人間と生態系が共に生きる未来のための“知の拠点”として捉え直し、施設の進むべき道を明確にしました。
- 専門性と親しみやすさを繋ぐターゲットの刷新: 専門家を惹きつける高度な独自性を守りつつ、次世代を育てる親御さんの興味を促す絶妙なバランスを追求。どちらの層にも深く届く、新しいコミュニケーションの形を導き出しました。
- 想いを一貫させる具現化と合意形成: 策定したコンセプトを起点に、シンボルから実用的なデザインまでを一貫した物語で構築。あわせて行政特有の意思決定プロセスにも寄り添い、関係者が納得感を持てるロジックで形にしました。
サポート内容・施策
長野県青木村、標高1000mの峠に佇む「信州昆虫資料館」は、国内有数の蝶の標本数を誇る、まさに“蝶の聖地”とも呼べる学術施設です。 村が誇る豊かな生態系を象徴する場所であり、絶滅の危機にあるミヤマシロチョウなどの保護活動を支える重要な拠点としての役割も担っています。
しかし、その圧倒的な専門性ゆえに、これまでは行政施設特有の硬さや閉鎖的なイメージが強く、本来の魅力が十分に伝わりきっていないという課題がありました。 「次世代のファンやファミリー層が、もっと気軽に足を運べる場所にしたい」。そんなご要望を受け、エドゥカーレでは資料館のアイデンティティから共に整えていきました。歴史ある資料館が、子どもたちにとっての「もっとも身近でワクワクする知の入り口」となり、さらには自分たちの住む地域や生態系のつながりにまで想いを馳せるきっかけの場となることを目指しました。
1. 施設の役割を見つめ直す、コンセプトづくり
まずは、資料館が地域や社会においてどのような価値を還元すべきか、その本質を問い直すことから着手しました。
- 人蟲共生というまなざし: 「虫がいなければ人間は生きていけない」という真理を、施設の新しい核として定義しました。単なる観察対象を超え、自分たちが住む環境を保全する意識を育む“原体験の場”としての役割を明文化しています。
- 地域の宝としての価値の翻訳: 行政施設としての公共性を保ちつつ、地域住民や観光客が自発的に訪れたくなるような、誇りと親しみを感じるアイデンティティを構築しました。
2. 「専門家」と「次世代」を両立させる、ターゲットの再定義
資料館の大きな特徴である“蝶の圧倒的な専門性”を活かしつつ、それをどう一般の方々への興味に変換するか、ターゲット層の捉え方を整理しました。
- 独自性の打ち出し: 蝶の聖地としての個性を際立たせることで、コアな虫ファンの目に留まるフックを強化。
- 親子の興味を育むトンマナ: 学術的な専門用語で固めすぎず、かといって子ども向けに崩しすぎない、洗練された「知的ワクワク感」をデザイン。親御さんが「ここなら良い体験ができそう」と直感的に感じるビジュアルバランスを追求しました。
3. 想いをかたちに宿し、組織の歩みを支える実務設計
定義した思想を具体的な形へと落とし込み、それが組織の中で正しく運用されるための土台も整えました。
ロゴの形式の提案資料
- 機能美をもたせたロゴデザイン: 行政実務で想定される極小サイズでの印刷や、あらゆる媒体での展開に耐えうる緻密な設計。蝶の標本が持つ精緻な美しさをシンボルに昇華させました。
- 合意形成を加速させる並走: 担当者の方が村長や上位組織へ自信を持って説明できるよう、裏付けとなるロジックを整理。プロジェクトが村の未来への投資として正しく承認されるための資料作成もサポートしました。
アフター・結果
提案時に作成したモックアップ
今回のプロジェクトで導き出したコンセプトは、資料館のスタッフの皆さんの間でも“共通の道しるべ”として機能し始めています。
新しいロゴが入り口となり、これまで接点のなかった層に資料館の深い魅力が届いていく。そして、豊かな標本や企画展を通じて、環境保全への理解が少しずつ波及していく。デザインが、青木村の貴重な学術資産と未来を生きる子どもたちを繋ぐ、息の長い架け橋となることを期待しています。
メンバー