こんにちは。小松崎です。
最近、就活生の方と話したり、新社会人の方の仕事の苦労話を目にしたりする中で、どう話せば評価されるか、を気にされている方が増えたなぁと感じています。
例えば、面接や面談といった場で上手な質問ができなかった。面接や採用担当の人との会話ができなかった。上司から「いい感じにまとめといて」と言われたものの、何を優先すれば良いか分からず、結局確認不足のまま進めて怒られてしまった。
かくいう私も就活生時代は、似たようなことで非常に苦労し、悩んでいました。面接では自己PRや志望理由、ガクチカを一通り述べ、聞かれたことに答え、しかし最後には「何か聞きたいことはありませんか?」と面接官からの不意打ちのボディブロー…。当時の私はそのようなことを聞かれても、特にありません、大丈夫です。としか言うことができず、質問なんて一切思い浮かびませんでした。結果、あえなく不採用。就活を経験してきた、あるいは今も取り組んでいる最中の方々にとっては、痛いほど分かっていただけることかと思います。
そうした経験もありつつ、私自身、編集という仕事を長く続けてきて思うこと、それは、“話す・伝える力”を伸ばすために、何よりも“聞く力”を伸ばすことが大事である、ということです。相手がなぜその言葉を選んだのか、本当は何を考えているのか、どんな経験が、その人の価値観をつくってきたのか。“聞くこと”は“考えること”の入り口です。聞くことで考えることができ、話すことができるのだと、編集者として1000人以上に話を伺ってきた経験からお伝えできると思います。上記の悩みは、“聞く力”を伸ばすことで確実に解決することができます。
今回は“聞く力”を伸ばすことが仕事や人生にどれくらいの豊かさをもたらすか、特に新社会人の方やこれから働き始める方、面接や面談での会話の仕方、質問の考え方で悩んでいる就活生の方に、編集者の視点から有益なハックを是非与えられればと思います。
“聞く力”はなぜ必要か?
まず、なぜ“聞く力”を伸ばすと良いのでしょうか?本当に必要なものでしょうか?実はこの力こそが、私の就活期に一番欲しかった力なのです。先ほど書いたように就活時代の私は、質問をすることができないというボトルネックに非常に苦しめられていました。当時は“質問力”はおろか、“聞く力”がそもそも無く非常に苦しんでいたのを覚えています。しかし、この聞く力や質問術こそが、相手の本音や価値観を引き出す上で、実は最も重要な要素なのです。
編集者という仕事は、この“聞く力”を活かして様々な人の意見を引き出し、調整する役割でもあります。相手に「何をしているんですか?」や、「それをなぜしているのですか?」または、「どうやってしているんですか」と問い続ける。つまり、What・Why・Howを問い続け、相手の内側にあるもの、良い特徴や性質を引き出す仕事です。鋭くて良い質問ができる人は、それだけでこの人分かってるなと見られる目が変わり、信頼につながります。テレビ番組なんかでも出演者の方が「なぜ〇〇なんですか?」や「〇〇ということですか?」などと専門家に質問した際に、「良い質問ですね、そうなんです」と言っている場面をよく見るかと思います。出演者が質問をしたことで、視聴者にとって有益な情報がさらに引き出されているんですね。
これは編集という仕事に限った話ではありません。例えば営業でも接客でも企画でも、マネジメントでも、そして面接・面談でも、人と関わる仕事や場面がある以上、上記のような“聞く力”は必須であると考えます。良い質問をできる人ほど、相手の考えや背景も理解できるし、信頼関係を築くのもとても早いです。
実際に私も現在、編集のお仕事だけでなく、ジャンルもターゲットも異なる企業の方から、プロジェクトのファシリテーターのお仕事もご依頼いただいています。“話す力”は自分のことを伝える力ですが、“聞く力”は相手を理解しようとする力です。だからこそ、“聞く力”は何でも屋になれる最強の武器であると考えてます。どの職種でも、どんな現場でも活用できるものと感じています。自分らしいものを考えたり、あるいは他者と関わる上であったり…”聞く力”は、時代や職種が変化しても長く活き続ける力なのではないかと思っています。
私が大切にしている“聞き方”
では、実際に編集者として仕事をしてきた私が、どのようなことを意識して人の話を聞いているか書き連ねていこうと思います。
編集という仕事は、ただ情報を集めるだけでは成立しません。相手がどんな想いでその言葉を選んだのか、なぜその行動をしているのか。質問を繰り返し、相手を深堀りしていく。つまりは対話を重ねていく必要があります。だからこそ私は、“良い質問”をしようとする前に、まず相手を理解しようとする姿勢を大切にしています。
皆さんは人の話を聞く際に、どんなことを意識してますか?あるいは大切にされていることはありますでしょうか。様々な場面がありますが、特にビジネス的な面で言えば、事前の情報収集を徹底している、といった方が多いかと思われます。しかし一方で、相手の良いところを引き出してやるぞ、と意気込むばかりに逆に変な質問をしてしまったり、質問の意図が相手に伝わらなかったりして、空回ってしまった経験がある方もいらっしゃるかと思います。
そのような時は、自分の“聞く姿勢”やマインドを変えてみると良いかもしれません。例えば、最初の方でも少し書きましたが、私は取材を行う際、相手の持つ価値を引き出すという心持ちで常に臨んでいます。具体的に言えば、その相手にしか話すことができない経験や、その人の性質あるいは癖。そういう相手固有のものを良いものとして引き出してあげる、ということを私は日頃意識しています。
また、「~って、こういうことですか?」と接続詞を入れて聞くことも大切です。そうすると相手の方は話が繋がってるように感じてくれます。そうなると、さらに話が途切れず続いていきます。「ということですかね?」や「となると」といった接続詞たちは、本質的な話を引き出す鍵になってくれます。
無論、編集者やライターとしてやっている以上、取材時の場合、事前の下調べは確実に行わなければなりません。ただ、編集者やライターの方以外でも是非覚えてくださると嬉しいなぁ、と思うことがあります。下調べは、相手に興味を持ったり好きになったりするために必要な作業である、ということです。そしてそれは、相手を理解しようとする姿勢や相手の持つ価値を引き出す力を養うのに非常に効果的なのです。相手の話を“聞く”上で大事なことは、やはり人に興味を持つことです。人に興味を持つためにもまずは相手のことを知る。何千人に取材をしてきて、異なる分野や知らない分野に携わる方にもお話を聞いてきました。しかし下調べをすることで、意外とすんなり相手の方のことを好きになれたり、尊敬できたりする箇所を見つけられるのです。当たり前のことだと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、今一度この当たり前に立ち返ってみると、きっと新たな視座を得られるはずです。すぐにでも実践できることなので、是非お試しいただければと思います。
“聞く力”は人生を豊かにする。
“聞く力”に対して現在のような考え方になったのは、編集の仕事を通して様々な人の価値観や人生に触れてきたのが大きいです。就活時代やインターンをしていた頃は、“聞く力”を持つことにただ憧れているだけでした。しかしたくさんの体験を積み重ねるうち、“聞く力”は人生を豊かにする、としみじみ思うようになってきたのです。誰かの人生や想いを聞く体験が、私自身の人生に大きな感動や価値観の変動をもたらしてくれました。話を聞く感動があって、相手を尊敬できる心を持てて、その心が相手と自分をつないでくれた。つまりは“聞く力”が私の中で、人に信頼される礎になってくれているのです。
例えば、私の会社で仕事をしてくれたライターさんや、あるフォトグラファーさんと取材等で場を分かち合って、お話聞いたり書いたりしているうちに、「エドゥカーレさんのこと本当に好きになってしまいました」、また「ファンになってしまいました」と言っていただけたことがあります。
話を聞くだけということにも、聞く感動といったものがそれぞれにあるんですね。特に本来普通に生きていたらあまり出会えない、あまり話を普段聞けないような-人や現場に話を伺うと、よりその感動は大きいものになると思っています。話の中に相手の方の考え方や、行動、在り方があって、それを“聞く”ことで感じ取るうち、心を打たれたりとか価値観を揺さぶられたりとかすることがあります。そういう積み重ねは、「自分もこういう風になっていきたい」、「こう在れるように頑張って、こういう人生にしていきたい」と考えられるようになっていく。
“聞く力”は自己成長や行動のための活力になり得ます。そのような意味で“聞く力”は人生を豊かにする、と私は考えています。今の社会はどちらかというと、皆が“発信したい側になりたい”時代ですよね。InstagramやX、TikTokといったSNSで、個人の発信が非常に容易になりました。それだけでなく、企業までもがメディアを有している時代です。言い換えれば“個の時代”ですよね。自分で何かを伝えられるのは素晴らしく、それで誰かと繋がり合えたなら尚の事良い。しかし“発信する側”が増え続けていった時、果たして誰がそれを“聞く”側になるのでしょうか?きっと世の中に“聞く人”が居なくなってしまいます。
“聞く”ということは相手を受け容れることでもあります。“発信”には数字や注目度が付き物で、自然と競争につながりかねません。そうなってくると、果たして社会のムードや空気感は穏やかなものであると言えるでしょうか?聞いてくれる人が増えること、それは自分だけでなく世の中全体の平和にもつながるはずです。温かい社会になり得る。自分の人生はこれでいいのか、どう向き合っていくべきか、現状維持に思い悩んでしまった際、まずはなんでも他の人の話を聞いてみてください。意外なところからきっと光が差し込んでくるはずです。