なぜいま那須野ヶ原は、地域主導で再生可能エネルギーを開発するのか?

こんにちは。

鈴木電機株式会社および那須野ヶ原みらい電力株式会社代表取締役社長の鈴木大介です。

私は祖父が創業した鈴木電機の三代目として、設備工事・電気工事を主とした事業を展開するとともに、2022年に設立した那須野ヶ原みらい電力の運営、そして那須地域の水源林を守る活動を行うNPO法人「1000年の森を育てるみんなの会」の代表をしています。

「なぜこんなにたくさんの活動をしているの?」と聞かれることも多いのですが、それはひとえに「持続可能な地域づくりの実現」というビジョンを叶えるためです。

今回は私たちが暮らす那須野ヶ原の抱える課題や、那須の風景を守り次世代へと繋げるためにやらなくてはいけないこと、目指すべき那須の未来について、私の考えをお伝えできればと思います。

鈴木大介 / 鈴木電機株式会社および那須野ヶ原みらい電力株式会社 代表
鈴木大介

鈴木電機株式会社および那須野ヶ原みらい電力株式会社 代表
1979 年那須塩原市生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)卒。博士(工学)。 2017年 鈴木電機株式会社の代表取締役社長に就任。 2022 年 那須野ヶ原みらい電力株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。特定非営利活動法人 1000 年の森を育てるみんなの会の代表も務める。

“水資源豊かな那須”の成り立ち

那須野が原

栃木県の那須野ヶ原という地域は、今でこそ日本三大疏水の一つである那須疏水(飲料・農業用水を供給する人工の用水路)が流れる水資源が豊かな地域として知られていますが、元々は水が乏しく広大な荒地が広がっているような場所でした。

「水の一滴は、血の一滴」と言われるほど水が貴重であり、人々の生命線でもあった時代に「那珂川から水を引き、那須野ヶ原に水を供給する水路をつくる」という構想を中心的に実行したのが、地元の実業家であった印南丈作氏と矢板武氏です。

二人が多くの協力者とともに、様々な困難を乗り越えてつくりあげた那須疏水は、那須野ヶ原の農業発展と経済振興に大きく貢献しました。

そして、現在の那須野ヶ原の風景が生まれた背景には鈴木電機の創業者である私の祖父・鈴木伊勢松も深く関わっています。

祖父は、農事向けポンプ設置業をとおして汲み上げた水を地域の方々が活用できるよう提供しました。

これが鈴木電機の原点であり、かつて荒涼とした大地だった那須野ヶ原の豊かな田園風景と農業の発展のきっかけにもなっています。

 

なぜ、那須野ヶ原で再エネ開発が必要なのか

 
冒頭でもお伝えした通り、私たちのビジョンは「持続可能な地域づくりの実現」です。
 
幼少期、私は友達と近くの川で遊んだり、魚を捕って焼いて食べたりしていました。今の子どもたちはまだできるかもしれませんが、その次の世代の子どもたちが同じように川遊びができるかどうかは不安があります。
 
川に魚がいなくなってしまうかもしれませんし、もしかしたら子どもたちが安心して遊べる川ではなくなってしまうかもしれません。
 
今の那須野ヶ原の風景は永遠に続くわけではないのです。
 

suzuki denki

 

今、那須に生きる私たちは、未来の子どもたちへ那須野ヶ原の風景を引き継いでいくためにも森林荒廃地球温暖化といった景色が壊れる要因となる問題を少しでも食い止める方法を皆で考え、実践していかなくてはいけません。

地球温暖化を止めるためには、脱炭素の実現、つまり再生可能エネルギー(以下再エネ)への切り替えが必要不可欠です。

那須野ヶ原で再エネ開発と聞いても、いまいちピンと来ない方も多いかもしれませんが、実は那須には水の資源、太陽の資源、山林の資源、バイオマス資源など、再エネの元となる様々な地域資源が豊富にあります。

しかし、地域資源が豊富であればあるほど、利益を求めて他の地域の方々や企業が参入してきます。

おそらく昔よりその勢いは激しいでしょう。

利益第一の考えに偏る外部の組織が入ってくると、資本主義に基づいた開発を進められてしまう可能性があるのです。

 

suzuki denki

 

豊かな地域づくりに欠かせない水を育む大切な那須の森が、どんどん伐採され、太陽光発電所になってしまうこともあるかもしれません。

自然の恵みに生かされて現在の暮らしがあるにもかかわらず、那須の未来をつくる再エネ開発で水資源を枯渇させてしまったら本末転倒ですよね。

 

“地域に根ざした企業”としての使命

 

那須における再エネ開発において最も重要なのは地域にとって利得のある開発をおこなうことです。

地元主導で再エネ開発をおこなえば、那須野ヶ原の自然資源をしっかりと守りながら、地域のためのエネルギーを作っていくことができると考えています。

だからこそ地元企業であるみらい電力や鈴木電機が、地域の皆さんの意向と未来の暮らしに目を向け、寄り添いながら、那須を持続可能にしていくための再エネ開発をリードしたい。

そして利益第一で参入してくる企業に対抗できる力をつけなければいけないと考えています。

 

鈴木電機の本社
鈴木電機の本社

と、ここまで言うと「みらい電力も企業なんだから利益第一じゃないの?」「他の地域の企業と何が違うの?」という声が聞こえてきそうですが、みらい電力は、那須疏水という地域水資源を活用した電力や、地域の皆さんが日々出しているゴミを燃料とした発電による電力を、地域の公共施設に買っていただくことで成り立っています。

つまり地域の資源や地域の方々があってこそ、みらい電力は成り立っているのです。

ですから地域のために資源を活用して地域課題を解決し、住民の暮らしの質の向上を実現しながら脱炭素に向かう取組みをおこなっていく。

その過程で、那須野ヶ原の新たな風景を創っていく。これが私たちの存在価値だと考えています。

「地域のため」というと、綺麗事に聞こえるかもしれません。

しかし、資源循環・経済循環を地域で回し、それを地域の皆様に応援していただけること、それがみらい電力、そして鈴木電機にとっても大きな基盤となります。

だからこそ私たちは地域の方々に共感や応援をしていただけるような、地元本意の再エネ開発をリードしていきます。

 

次の世代にバトンを繋げるために

suzuki denki

地域の歴史的遺産である「那須疏水」の実現に尽力した先人たちが残した言葉に「土地改良は苦しくとも子孫のための財産作り」というものがあります。

その言葉には、「苦しい時期があっても、必ず後世に素晴らしい財産を残してくれたと評価されることを信じて頑張るべきだ」という想いが込められているのですが、その信念を貫いて行動してきた先人たちのおかげで、那須野ヶ原の今があります。

私は先人たちから受け取ったバトンを、再エネ開発を通じてより強固なものとし、次の世代へしっかりと繋げていきたい。そして、そのバトンを受け取る世代を育てるというのも我々の重要な課題です。

だからこそ、私は学校などでの講演やワークショップを通じて、子どもたちに那須野ヶ原の歴史について伝え、一人ひとりが那須野ヶ原の歴史を繋いでいく一員であり、ここにいる君たちが次の歴史をつくっていくんだというメッセージを伝えていきたいと思っています。

そのメッセージを受け取り、那須の歴史の次の1ページをつくることを夢見てくれる子はきっといるはずです。

その子たちがいずれ、次の未来をつくってくれると信じています。

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