地域の歴史を未来へ紡ぐ。慰霊碑清掃が教えてくれたこと

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毎年9月、仲間たちと地元の事故慰霊碑の清掃活動を行っています。

この活動は昔からの恒例行事ではありません。過去の出来事に向き合い、先人たちの想いや努力に感謝する大切な時間です。

過去を忘れず、その想いを次の世代へ受け継いでいくことが、未来を守るための大切な一歩だと信じています。

鈴木大介 / 鈴木電機株式会社および那須野ヶ原みらい電力株式会社 代表
鈴木大介

鈴木電機株式会社および那須野ヶ原みらい電力株式会社 代表
1979 年那須塩原市生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)卒。博士(工学)。 2017年 鈴木電機株式会社の代表取締役社長に就任。 2022 年 那須野ヶ原みらい電力株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。特定非営利活動法人 1000 年の森を育てるみんなの会の代表も務める。

慰霊碑の清掃活動とは

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まずは、事故慰霊碑である「木ノ俣隧道殉難者供養塔」の建つ場所には、かつて那須疏水の水を農地へとつなぐ「木ノ俣隧道」という水路トンネルがありました。

しかし、昭和41年6月に台風の影響で崩れてしまい、水田への水の供給ができなくなってしまったんですね。田植え直後の断水は農家にとって死活問題。約60名の地元の方々が復旧作業に取り掛かりました。

ところが狭いトンネル内に発電機を持ち込んで作業をおこなったために一酸化炭素中毒が発生し、25人が命を落とし、多くの重傷者も出るという、悲惨な事故が起こってしまったのです。

 

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この事故を受けて、地元の政治家である渡辺美智雄さんが国会で那須地域の農業災害について訴えて、早急な改修を求めました。

その結果、深山ダムや赤田調整池等の建設を含む「那須野が原総合開発」が当初の予定より半年早く進められて、安定的に水を供給できる水利システムが整備されたのです。

現在、木ノ俣隧道は使われていませんが、事故の犠牲者を供養するために建てられたのが、この「木ノ俣隧道殉難者供養塔」という慰霊碑です。大変悲しい事故ではありましたが、その後の那須の未来を切り開く大きな機運を作るきっかけにもなりました。

毎年お彼岸前に地域の仲間と共にこの慰霊碑の清掃活動を行っており、今年で18年目となりましたが、この活動を毎年続ける度に、先人への感謝の気持ちが深まっています。

人生の師・工藤さんとの出会い

この活動が18年前に始まった理由は、私の人生に大きな影響を与えた工藤さんという経営コンサルタントとの出会いに遡ります。

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慰霊碑清掃活動初年度の様子。一番左が工藤さん

工藤さんは、私の父が契約していた経営コンサルタントで、私より30歳ほど年上の方でした。

おそらく父が工藤さんに「息子の面倒を見てほしい」とお願いしていたのでしょうね。私が社会人になりたての頃、28歳の時に、工藤さんのコンサルティングの現場に運転手兼助手として同行させてもらいました。

日本全国にとどまらず、ベトナムやアイスランドなどの海外にも一緒に行きました。自分の考えが固まりきっていない時期に、人生の先輩と旅をしたことは、今振り返ると本当に貴重な経験だったと感じています。

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この方に出会わなければ、今とは全く違う道を歩もうとしていたかもしれません。工藤さんは、私に「エネルギーを地域振興に結びつける」という視点を教えてくれた人でもあります。

2006年、工藤さんと私は北海道の稚内で、風力発電を使った水素製造装置の試験導入プロジェクトに携わっていました。

稚内は日本の最北端に位置し、どちらかというと少し寂れたイメージを持っている方もいるかもしれません。

しかし実際には、「最北端から最先端へ」というビジョンを掲げ、新エネルギーの活用モデルとなる、地球環境に優しいまちづくりを地域全体で進めている、活気あふれる街なんです。

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そのプロジェクトには非常に多くの課題があり、困難な場面も数多くありましたが、稚内の方々との深い交流を通じて「再生可能エネルギーを地域振興にどう活用するのか」という彼らの考え方に触れることができました。

この経験を通じてエネルギーは遠い存在ではなく、地域に根ざしたものだと考えるようになり、私が生まれ育った那須でも、エネルギーを活用した街づくりを考えるようになりました。

慰霊碑清掃活動のはじまり

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慰霊碑の清掃活動は、そんな工藤さんの提案から始まったものでした。

ある時、彼は平野達男さんの著書『水を求めて 那須野ヶ原総合開発』を読み、その内容に深く感銘を受けたそうです。

「君たちは地元にこんなに素晴らしい歴史があるのに、それを知らないのか」と、工藤さんは私たちに問いかけたんです。

そして「那須の歴史を理解するために、まず慰霊碑の清掃から始めよう」という工藤さんの言葉に背中を押される形で、私は地域の仲間7人とともに清掃活動を始めました。

その後、那須疏水の源流を訪ね、地域を巡りながら、那須の歴史や先人たちの思いを深く理解するようになりました。

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そうしているうちに、木ノ俣隧道事故のことを後世に伝える人がいないことに気づき、自分たちがその使命を担いたいという思いが徐々に強まったんですね。

こうして慰霊碑の清掃活動は毎年の恒例行事として定着し、工藤さんが亡くなられた今でも、仲間達と共に続けています。

慰霊碑清掃活動のこれから

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18年間で続けてきた清掃活動ですが、今後はこの活動をさらに発展させ、一緒に取り組んでくれる仲間を増やしていきたいと考えています。

慰霊碑がある場所は山奥に位置しており、地元の方でも実際に訪れたことがある方はほとんどいないのではないかと思います。普段は釣り人くらいしか足を運ばない、そういったところにあります。

それでも慰霊碑の清掃活動は、那須の歴史を築いてきた先人たちとの繋がりを身近に感じる、非常に貴重な機会です。

地元の若い方々や那須に移住されてきた方々にも、先人たちが那須に心を注ぎ、土地改良を続けてきた歴史を知っていただきたいと思います。

そして那須の未来について共に考え、一緒に汗を流してくれる仲間が増えることを、心から願っています。

清掃活動は来年も9月に行う予定です。興味がありましたら、下記の会社HPの問い合わせページよりお気軽にご連絡ください。

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