島根県石見地方から、ユニークな木工品を生み出すブランド『iyasaka(イヤサカ)』。石州瓦と島根の木材を組み合わせたティッシュボックスや、美しい木目が特徴の昇降デスクなど、地域の素材を活かした商品を作っています。
このブランドが大切にしているのは、広葉樹の魅力を引き出すこと。
「本物の良さを大切にしてくれる人に届けたい」。
そんな想いで、素材と真剣に向き合っています。今回は、商品ができるまでの舞台裏や、一つ一つのプロダクトに込めた想いを、株式会社suhuの幸村さんに聞きました。
私たちの事業には、三つの柱があります。
一つ目は、日用品です。『石州瓦とクリの木のティッシュボックス』や『石州瓦とクリの木のダストボックス』などがあります。消費者に身近で使いやすいものから始めようと考えました。お土産品のような手頃な価格帯の商品も考えましたが、ギフトや周年記念品として価値を感じられる商品を企画しました。
二つ目は、家具です。店舗什器や注文家具といった本格的な製品です。例えば、アクアスの施設内に置く什器や、浜田市の「ホテル松尾」のエントランス什器も手がけました。
三つ目は、原料販売です。この三つの方向性を決め、できることから一つずつ進めています。
ブランド『iyasaka』のロゴマークにはイノシシを採用しています。これは、「地域の良いものを掘り起こして活かす」という私たちのミッションを表しています。この地域ではジビエ料理も楽しめるので、イノシシはぴったりのシンボルなんです。
『iyasaka』の主力商品の一つが、石州瓦とクリの木を組み合わせたティッシュボックスです。これは、歴史ある亀谷窯業さんと一緒に作った商品です。浜田市のふるさと納税の返礼品としても人気で、たくさんの注文をいただいています。
この商品を作る中で気づいたことがあります。それは、異なる素材を組み合わせると新しい魅力が生まれるということです。たとえば、鉄や和紙といった地域の資源。この土地に根付いた200年の歴史ある素材です。これらを組み合わせると、もっと魅力的な商品ができると信じています。
昇降デスクの開発は、兄の一言がきっかけでした。赤坂の高層ビルで働いていた兄が、「立って作業できるデスクが欲しい」と言ったんです。当時、昇降デスクはまだあまり知られていませんでした。それなら、自分たちの技術と島根の木材を使って作ってみようと考えました。最初のモデルは、ふるさと納税の返礼品としてリリースしました。価格は80万円。高額でしたが、ある開業医の方が新築のお家に置きたいと購入してくださいました。その方から「最高です」と言っていただけたときは、本当に嬉しかったです。高額な商品には、機能や性能だけでなく、ストーリーや背景が重要です。価格という壁を越えるには、お客様の共感が欠かせません。応援したいという気持ちがあれば、価格以上の価値を感じてもらえるのだと実感しました。昇降デスクは、都会にお住まいの方々に多く選ばれています。「地域の良いものを応援したい」という声をいただくこともあります。商品を超えて、私たちの活動への共感や応援を感じられるのは、製作者として本当に励みになります。
群言堂さんとの取り組みから、新たに生まれた商品もあります。
一つ目は『階段ダンス』です。昔の日本家屋にあった階段ダンスを現代に活かしたい、そんな発想から始まりました。クローゼットとしての使いやすさを考え、「これを家に置いたらどうなる?」というアイデアで形にしました。製作にはかなりの時間をかけました。木目の見え方にもこだわり、一つひとつの部品を丁寧に仕上げています。
二つ目は『空を見上げるための椅子』です。名前の通り、空を見上げるために作られました。でも、それだけではありません。群言堂さんのお客様の年齢層を意識して、座りやすさや起き上がりやすさにもこだわっています。実用性と美しさを両立させた椅子です。
私たちの全ての商品には、島根の木材本来の良さを引き出すという一貫した思いが込められています。そのため、表面処理にはウレタン塗装ではなく、オイル塗装を選びました。オイル塗装だと、木目の細かな質感を指先で直接感じられます。木材本来の良さを、存分に楽しんでもらえるんです。木は生きています。時間がたつほど、味わいが深まります。その特性を活かすために、オイルを塗り足せる仕様にしました。こうすることで、長く愛着を持って使えるプロダクトになると考えています。メンテナンスには手間がかかります。でも、その手間を惜しまない「本物の良さ」を大切にする人にこそ使ってほしい商品です。製品開発を進める中で、たくさんの課題も見えてきました。特に、計画的に進める大切さを強く感じています。今は新商品の特許申請も進めています。より良い製品を作るために挑戦を続けています。これからは、ふるさと納税だけではなく、地域を応援してもらえる仕組みをもっと広げていきたいです。私たちの想いに共感してもらえる商品を、一つずつ丁寧に作る。そうすることで、島根の木工品を通じて地域とつながる輪が、少しずつ広がっていくと信じています。
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「GOOD NATURE COMPANY 100」プロジェクトは、持続可能な社会の実現に向けた企業の活動内容を、おもしろく、親しみやすく、その物語をまとめたデータベースです。
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