未来の海を守る。島まるごと無添加石けん生活プロジェクトとは|シャボン玉石けん株式会社

- Sustainability Report -

日本各地で自然環境の豊かさが失われつつあるなか、この流れに歯止めをかけることは、国や一個人の活動だけでは難しいのが現状です。

そうしたなかで、今注目されているのが企業や地域による自然環境保護の取り組みです。

法律によって自然が守られている国立公園や国定公園などの保護地域だけでなく、企業や地域が力を合わせて自然環境を保護しようという取り組みが全国各地に広がっています。

これからは環境活動に積極的に取り組む企業を支援することが、豊かな自然環境の保全と再生につながります。

そんな時代に応援したい企業の活動を紹介するサステナビリティレポート。

今回取り上げる企業は、シャボン玉石けん株式会社です。

島全体で石けんを使用した類を見ない実証実験

1910年創業のシャボン玉石けんは、「健康な体ときれいな水を守る。」という企業理念のもと、1974年から無添加石けんの製造・販売を行っています。

シャボン玉石けん
引用:シャボン玉石けん公式サイトより

人にも自然にもやさしい無添加石けんの製造・販売を行うこと自体が、自然環境保護や持続可能な社会の実現に寄与すると考えているためです。

近年、「無添加」をうたった商品が増えていますが、添加物が1種類入っていないだけで「無添加」とうたっている商品も数多く存在します。

シャボン玉石けんの無添加石けんは、主成分以外は何も入れず、昔ながらの釜炊き製法で時間をかけてじっくり丁寧に作り上げています。

より環境にやさしい暮らし方というのは、どういうことなのか?

シャボン玉石けんは無添加のパイオニアとして、製品作りを通して環境保全や自然保護の重要性を社会に提言しています。

シャボン玉石けんヒストリー
引用:シャボン玉石けんヒストリー

人にも自然にもやさしい無添加石けんの使用を推奨するため、シャボン玉石けんでは、さまざまな自治体に自社製品を導入いただいています。

北海道の東部太平洋岸に位置する厚岸町は「石けんの町」として全国で唯一、石けんの購入助成制度が制定され、町全体で石けんの使用が推奨されています。

鹿児島県屋久島町の一湊区では家庭排水による環境負荷を軽減し、世界遺産の海を守るため、家庭で無添加石けんの使用を推奨することを2018年に宣言しています。

そんなシャボン玉石けんが参画した国内でも類を見ないプロジェクトがあります。

それは2021年9~11月に福岡県宗像市地島で実施された「生活排水の環境及び生物に対する影響に関する実証実験プロジェクト」です。

引用:〈無添加石けんは環境にやさしい!〉島まるごと実証実験プロジェクト結果

このプロジェクトは、シャボン玉石けん、山口大学大学院創成科学研究科、一般財団法人九州環境管理協会、宗像市の産官学連携によるもので、生活排水が環境や生物へ及ぼす影響について、洗浄剤として石けんを使う前後でどのような変化があるのかを調査しました

生活排水の環境への影響に関する実証実験は、シャボン玉石けんとして初の取り組みであり、島全体で石けんを使用した実証実験は国内でも類がなく、社会的意義の高いプロジェクトでした。

プロジェクトの舞台となった福岡県宗像市地島は、玄界灘と響灘の境界部に面する周囲9.3km、人口約140人の小さな島です。

島には泊地区と豊岡地区の2つの集落があり、ワカメ、ウニ、アワビなどの磯漁業・釣漁業が盛んです。

プロジェクトでは、島内の一般家庭、地島小学校、漁村留学センター「なぎさの家」において、一定期間、洗浄剤としてシャボン玉石けんの製品を使用し、実証実験前後の水質や微生物の分析を行って、生活排水による環境への影響を調査しました。

微生物の調査

水質調査
引用:〈無添加石けんは環境にやさしい!〉島まるごと実証実験プロジェクト結果

- BENEFITS OF ACTIVITIES -
無添加石けんで海の環境が改善

そもそも洗浄剤には大きく分けると、「石けん」と「合成洗剤」の2種類があります。

両者とも体や物を洗って汚れを落とすという目的は同じですが、原料や製造方法、出来上がった成分などは全く異なります。

石けんは、排水として河川や海に流れると、短期間で水と二酸化炭素に生分解され、石けんカスは微生物や小魚の栄養源となるため、環境負荷の少ない洗浄剤と言えます。

実証実験では排水処理施設と、そこに棲む微生物に着眼して実験計画が立案されました。

排水処理施設は、生活排水を微生物にきれいにしてもらう場所です。そこに棲む微生物を観察することで、何か変化が起きるのではないかと考えました。

海を汚す大きな原因と言われているのが生活排水です。その70%が風呂、洗濯、台所からの排水と言われています。

生活排水は排水処理施設でゴミなどを取り除いたあと、微生物によって汚れを分解して海へと流されています。

微生物は、生活排水をきれいにするために欠かせない存在です。実証実験中に石けんのみを使用した結果、廃水処理場の汚泥状況が良好な場合に現れる菌が確認され、微生物は多様性を増し、種類と数量が増加していて、下水処理施設の環境に良い影響を与えることがわかりました。

水の汚れの指標であるBODの数値からも石けんを使用することで、海へ放出される水をよりきれいにできることがわかりました。

- BENEFITS OF ACTIVITIES --
島民の環境問題への意識や行動に変化

実証実験に参加した住民に実証実験の前後でアンケート調査を行い、それぞれの回で37世帯95名、34世帯93名から回答を得ました。

今回の実証試験では期間中、約8割の住民が無添加石けんのみを使用しました。

実証実験の前後で環境問題への関心に対して、関心の高さを「ある・ややある・あまりない・ない」の 4 段階で問うと、「ある・ややある」の合計は前後で 90%以上と差はないものの、「ある」と答えた割合は 23%から 42%へと19 ポイント増加しました。

また、住民に対する成果報告会では、「実験後も石けんを愛用している」、「今後も使っていきたい」、「島でも購入できるようにしてもらいたい」 などの意見が挙がり、実証実験への参加を通して、環境に対する意識の変化が日常の行動変容へとつながっていることも確認できました。

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1個の石けんから地球環境を考える

福岡県宗像市地島での実証実験は、1つのモデルケースにすぎません。全国どこでも、誰でも取り組めるものです。

環境にも人にもやさしい石けんを選ぶことは、ささやかな選択かもしれませんが、豊かな自然環境の保護につながる一歩だと言えます。

日本では下水処理施設が発達している一方、世界の生活排水の約90%は未処理のまま放流されているという行政機関の報告もあります。

シャボン玉石けんでは、福岡県宗像市地島での実証実験のような一歩踏み込んだ取り組みを通して、ひとつの石けんが地球環境にどう貢献していけるのかを追究しています。

シャボン玉石けん株式会社の活動はこちらをぜひご覧ください。

■参考・出典 

text / yoko wakayama
edit / takuro komatsuzaki 

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