住めば、もっと森に遊びに行くようになる。森と共に生きるという体験を提供|森山ビレッジ

今回のGOOD NATURE COMPANYは、秋田を拠点に「森山ビレッジ」という一棟貸しの宿を運営する合同会社森山ビレッジ

5棟が一屋根でつながっている本施設は、運営者を含む2世帯が居住、残りの3棟が泊まれる、いわゆる宿泊施設。

しかし、ただのホテルやAirbnbのような場ではない。

多様な住まい方を提供するこのビレッジは、日々の暮らしを送る地域住民や二拠点居住者、さらには訪問者までもが交流し、共にコミュニティを育んでいる場所であり、子どもたちの教育を支援する側面も持っている。

運営が始まってからわずか半年にもかかわらずリピーターが絶えない。
一体、利用者は何を求めて森山ビレッジに訪れるのか。

そこには、著名な観光地やリゾート施設にはない「地域の人々や自然とのつながり」があった。

森山ビレッジ

生物多様性に寄与する会社の紹介

森山ビレッジとは

「未完成さ」を楽しむ暮らしの場

森山ビレッジの特筆すべき点は、その「未完成さ」を楽しむ暮らしの場としての機能。余白を残した設計によって、訪れる人々が自ら関わり、創造的に遊びながら新しい価値を生み出している。

滞在者の中には、外壁の施工や玄関台の加工など、施設の暮らしづくりを自ら手伝ってくれる人も。滞在者は森山ビレッジの“村民”として、地域のコミュニティに参加し、施設の共有物を一緒にメンテナンスをするなどの「余白を楽しむ体験」ができるのだ。

森山ビレッジ

ビレッジは地域と緩やかに繋がっており、町の子どもたちが何かをやりたいと思った際に森山ビレッジを活動の場として活用できるような環境が自然に整っている。ビレッジは地域全体を「暮らしのフィールド」として捉え、依存先を増やしながら持続可能な地域づくりを目指しているのだ。

出会いを育む、予定調和でない体験と快適な滞在環境

森山ビレッジの最大の魅力の一つは、「予定調和でない体験」ができること。滞在者と住民をつなぎ、町のコミュニティに引き入れたり、滞在中のガイドを共有することで、町内のさまざまな場所で出会いが生まれている。

森山ビレッジ

もちろん、デジタル技術を取り入れたスマートな滞在環境も提供。チェックイン・チェックアウトの無人化やスマートロックなどの導入により、都会のホテルに慣れた人でも快適に滞在できる工夫がされている。

観光と移住の間にある価値

森山ビレッジは観光地でも移住地でもなく、その間に位置する独自の存在。都会から気軽に訪れることができ、夏や冬でも快適に過ごせる環境を提供。

森山ビレッジ

特に「教育留学」の場としても注目されており、小学生の子どもを持つ家族が短期的に滞在しながら、転校せずに五城目町の小学校に通うことが可能だ。家族で森山ビレッジに滞在しながら、子供たちが五城目の学校で学ぶという新しい形の学びが実現している。

このように、森山ビレッジは生態系への配慮、地域との連携、そして教育の新しい形を取り入れた場所として、注目を集めているのだ。

森山ビレッジの生態系配慮への取り組み

森山ビレッジ

建てるから暮らすまでも地域の生態系に配慮した取り組みをおこなっているのも森山ビレッジの特徴の一つ。特に、以下の3つのアプローチが注目されている。

1. 地域の資源を活用

秋田県は県の7割が森林に覆われているが、経済的な理由から地元の木で家を建てる人は少数。森山ビレッジでは、地域の木材や住宅に関わるプレイヤーたちとタッグを形成し、半径30km圏内の里山から得られる森林資源を活用して住宅を建設。地域資源を循環させるために適切に地元の木材を使用し、運搬にかかるCO₂の排出負荷を抑えているのだ。

2. エネルギーの地産地消

薪ストーブや水力発電による自然エネルギーを利用して、森山ビレッジの電力を賄っている。土地の風土に根ざした建築様式や自然エネルギーの利用を意識し、寒い冬や暑い夏も快適に過ごせるエコハウス基準を満たす住宅を実現した。

森山ビレッジ

3. 遊休地利用とデジタルファブリケーション技術を活用して建築

森山ビレッジの建設にあたり、秋田県五城目町のシンボルである森山(325m)の裾野に広がる2000平米の遊休地を活用した。訪れる人々や住民がデジタルファブリケーション技術を活用して森山ビレッジの建築や庭に小屋を建てようと計画するなど、創造的な活動の場としても機能している。

森山ビレッジ

森山ビレッジ運営 丑田氏 「森山ビレッジで過ごせば、森で遊ぶことが生活の一部になる」

これまで秋田、神田(東京)、鹿児島で都市と田舎の関係性をテーマにした事業に取り組んできた丑田氏。その一環として、地域資源とコミュニティを活かした「30km圏内の森林資源とコミュニティで創る集落」というコンセプトを持つ森山ビレッジが誕生したという。

丑田俊輔
丑田俊輔

福島生まれ東京育ち。2014年より五城目町在住。学びのクリエイティブ集団「ハバタク」、まちづくり拠点「ちよだプラットフォームスクウェア」、コミュニティプラットフォーム「Share Village」など。”あそび”が口癖。秋田と神田と鹿児島を行き来して暮らしている。

森山ビレッジ設立の経緯

「森山ビレッジを設立するきっかけとなったのは、秋田県に引っ越した際に出会った茅葺きの古民家でした。地域の集落のみんなで屋根のススキを育て、葺き替えを手伝うという昔ながらのコミュニティの仕組みが非常に面白いと感じました。時代の流れでこういった共同体的な活動は減少してきましたが、自分はその楽しさや豊かさに魅了されたんです。このような地域のコミュニティを拡張して、同じように楽しさを感じる人を増やすことが森山ビレッジの活動の原点です。」

コンセプトに込めた想い

「森山ビレッジが“30km圏内の森林資源とコミュニティで創る集落というコンセプトを掲げているのは、住まいと地域の自然資源、そしてそこで暮らす人々の産業が分断されている現状を勿体ないと思っているからです。住まい方も地域の資源と結びついていくことで、もっと豊かになるはずだと考えています。」

森山ビレッジ

どのような人々が訪れるのか

「森山ビレッジには、いろいろなニーズを持った人々が訪れます。田舎の美しい景色を楽しんでリラックスしたいという人や、地域の生活を味わいたい、地域の人々と交流したいという方もいます。滞在しながら地域の生活に触れたい、例えば教育留学の一環として一時的に住める場所を探しているというニーズもあります。これからもっと多くの人に知ってもらい、訪れてもらいたいですね。」

再来訪にどう繋げているのか

「一度でも泊まってくれた方には、クローズドのFacebookグループにご案内しています。そこでは、森山ビレッジの日常やイベントの情報を発信しているので、『この季節にまた行ってみようかな』と思ってもらえたら嬉しいですね。」

建てるところから、なぜ地元の森を生かしたのか

「日本全国で、地元の木材を使って家を建てることが少なくなっています。効率の観点から外部の資源に頼ることが一般的ですが、森山ビレッジでは地域の資源を最大限に活かし、森と共に生きるという体験を提供しています。

実際に森で遊ぶことが生活の一部となり、住む人がもっと森に遊びに行くようになれば、生活が豊かになり、社会的な課題にも繋がっていくと考えています。」

森山ビレッジから描く未来

「文化的価値があるのに経済的価値はない。お金がないと維持管理するのも難しい。そういった場所は、秋田県に限らず全国に多数存在します。視点を変えてコミュニティの形をアップデートすることで、共助の形を再発明したり新しいデジタルテクノロジーを手触り感がある形で生かしていけるのではないかと思っていて。

森山ビレッジが、地域資源を活かしてコミュニティをアップデートしていく取り組みが日本全国に広がっていくきっかけになれれば嬉しいです」

森山ビレッジ

今後への期待

森山ビレッジの取り組みは、単なる観光地ではなく、地域全体のコミュニティや生活を再構築しながら、新しい原風景をつくっていくプロジェクトと言える。

森山ビレッジがきっかけとなり、例えば、近隣の森から住宅を作る動きが活発化する可能性も考えられる。

地域資源を活かしてコミュニティをアップデートしていくこの取り組みが日本全国に広がっていくことを願ってやまない。

取材協力・写真提供:森山ビレッジ

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