瀬戸内の島々では、自然とアート、人々の暮らしが美しく調和しています。
今回は女木島・男木島・小豆島を訪れ、それぞれの島で感じた“自然と人がつくる美”を紹介します。
島ごとに景色や文化、アートの表現が異なり、歩くだけで新しい発見があります。
風や海の音、人々の暮らしの音までもが、まるで作品の一部になっているような感覚。
瀬戸内の穏やかな時間の中で、島の美しさをじっくり体験してきました。
香川県の高松港からフェリーで約20分かけていくことのできる女木島は、古くから「鬼ヶ島」と呼ばれる伝説の島です。昭和の初めに鷲ヶ峰山で鬼が住んでいたとされる洞窟が発見され、鬼伝説の舞台として知られるようになりました。
島内ではその雰囲気を感じられるスポットがあり、訪れる人々の心を惹きつけています。また、2010年から3年ごとに開催されている瀬戸内国際芸術祭の会場としても注目を集め、自然とアートが融合した独特の魅力を楽しむことができます。さらに、大河ドラマやさまざまなドラマのロケ地としても利用されているため、芸術や歴史が交わるような特別な観光地となっています。
女木島では、展示されているアート作品や景色を眺めることだけでなく、実際に体験して楽しむことのできるアート作品も多くあります。ブランコを漕ぐと音が鳴る作品では、自分の動きによって音が生まれ、その音が空間全体に広がっていきました。その響きの中で、私はまるで自分がこの空間の一部になったような感覚を覚え、「美しさとは、自然と人の調和の中に生まれるものなのかもしれない」と感じました。

また、島の中にある卓球台アートでは、人々が遊びながら笑い合う姿そのものが作品の一部となっていました。その様子は、島の穏やかな景色と一体となり、まるで自然が人々の楽しさを包み込んでいるようでした。
このように、女木島のアートは見るものとしての美しさだけでなく、“自然と人が一緒に生きている”という調和の美しさを感じさせてくれます。人工物であるアートが自然や人々の営みと一体となることで、島全体がひとつの大きな作品のように感じられました。
香川県高松市沖に浮かぶ小さな島、男木島(おぎじま)。高松港からフェリーでおよそ40分、瀬戸内海の青い海を渡ると、急な斜面に家々が立ち並ぶ独特の景観が目に飛び込んできます。平地が少ないため、住宅は階段状に積み重なるように建てられており、まるで迷路のような町並みが広がっています。港に到着した瞬間から「小さな冒険の始まり」という気持ちにさせてくれる島です。

男木島は「瀬戸内国際芸術祭」の会場としても知られています。島に上陸するとまず目に入るのが、フランスの芸術家ジャウメ・プレンサによる作品「男木島の魂」です。貝殻をイメージした交流館の屋根には、8つの言語で文字が刻まれており、訪れる人々をやさしく迎えてくれます。アート作品が日常の中に自然に溶け込む様子は、島ならではの美しさを感じさせます。
島の魅力はアートだけではありません。坂道の石段や石畳が続く路地を歩けば、壁に描かれたカラフルなペインティングが目に入ります。路地裏に隠れるように点在しているため、散策しながら見つける楽しさもあります。急な石段に息を切らせても、振り返れば瀬戸内海の絶景が広がり、疲れを忘れさせるほどの美しさがあります。
さらに、男木島には「オンバ」と呼ばれる乳母車文化があります。島の道は狭く車が入れない場所も多いため、オンバは荷物や子どもを運ぶ生活の必需品です。近年では「オンバ・ファクトリー」という工房もあり、カラフルにペイントされたオンバが島の風景に溶け込み、独自の文化として注目されています。生活の知恵が色彩や形になった姿は、アート作品にも勝る島独自の美しさを感じさせます。
男木島では、日常生活の中にアートや工夫が息づき、景観と文化が調和した美しさが味わえます。訪れる人々は、ただ見て楽しむだけでなく、生活文化の中にある美を感じることができるのです。
アート作品の中でも印象的だったのが「未来の資料館」。ここには100年後の未来をテーマにした作品が展示されており、古い建物と未来的な表現が交差する、不思議な空間を体験できます。島全体が美術館のようになっていて、歩くたびに新しい発見があるのが男木島の魅力です。

お昼には「ogijima ゆくる」というカフェに立ち寄りました。囲炉裏を囲んでゆっくりできる落ち着いた空間で、地元の食材を使った料理は素朴ながらとても美味しかったです。観光客向けの施設はあるものの、過度に観光地化されていない点も男木島の大きな魅力。訪れると「観光に来た」というよりも「人々の暮らしに少しお邪魔している」という感覚が残ります。
猫の島としても知られる男木島。路地や港で気ままに過ごす猫たちは、観光客にとって癒しの存在です。猫と出会えるかどうかは運次第ですが、ふとした瞬間に現れて近寄ってきてくれる姿は、島を訪れる楽しみのひとつといえるでしょう。
男木島は、アート、伝統的な暮らし、そして豊かな自然が共存する不思議な島です。高松から日帰りでも訪れることができますが、時間をかけてゆっくり歩くことで、その魅力をより深く感じることができます。
都会の喧騒を離れ、静かな時間を過ごしたい方、アートや猫に癒されたい方に、ぜひおすすめしたい島です。
フェリーがまだ到着する前からほのかに香るごま油の匂い。それと同時に、出迎えてくれる多数の芸術作品。これが小豆島です。
今回、私たちが訪問した小豆島とは、瀬戸内海に浮かぶ島で、香川県に位置しています。多くの人々が「オリーブアイランド」という名称で呼んでいます。そう呼ばれる所以は、日本オリーブ栽培発祥の地だからです。小豆島は、「古事記」に登場し、江戸時代には徳川幕府の天領となったこともあり、とても長い歴史を持つ島でもあります
私がこのブログで紹介するのは、2つの作品です。
最初に紹介する芸術作品は、「オリーブの夢」という芸術作品です。

作者はアーティストのワン・ウェンチー(王文志)さんが作成したもので、小豆島の竹を編んで作られた巨大なドーム状の作品です。
この作品がある場所は、島の中心部から遠く、山の中にあり、緑豊かな自然の風景から、一変して佇む巨大な作品です。
この作品は中に入ることができ、中に入ってみると驚くことに本当に全てが竹でできていました。そして、中のドーム状の休息スペースで、靴を脱ぎ横になってみると、微かに森の茂みが風で揺れる音、そして近くを流れる川のせせらぎが聞こえてきました。
竹という自然から生まれたもので、それに包まれ、更に自然を感じる。それがこの作品の一つの楽しみ方だと感じました
ガイドさんによると、芸術祭ごとに、撤去され、また新しい作品が生まれるとのことで、そういったところにも芸術の儚さを感じます。
二つ目に紹介する作品は「いっしょに」という作品です。

この作品は、スタシス・エイドリゲヴィチウスさんの作品で、作者さんの作品の意図としては、“一人の人間がもう一人の人間を助けている。この助けは目に見えないこともあるが、ここでは目に見える。“といったものです。
ガイドさんが、一人ずつ作品の題名を考えてみようという提案で、「ドミノに見える」や「男性と女性の心」、先生は「黒人が白人の鼻に刺さっていることから、帽子を被っていて、これは文化を表している」などの意見があり、自分なりに作品名を付け、それを共有することで、自分になかった視点が共有され非常に面白いと感じ、これも一つの芸術の楽しみ方だと思いました。
芸術祭では、「こえび隊」という制度があります。
瀬戸内芸術祭を支えるボランティアサポーターのことです。日本中、世界中から集まり、瀬戸内を支える。
支える側になることで、新たな観光客と会話を交わし、新しい芸術の視点を得る。この制度は非常に素晴らしいと感じました。
小豆島を、私たちのテーマ「人の営みがつくる美」に当てはめると、小豆島の芸術作品のほとんどは、島の住民の方々やこえび隊の方々の協力があって成立していて、作品も小豆島のものを使用し、小学校を利用した作品など芸術祭自体に小豆島の住民の方々の思いが込められていると感じました。
女木島、男木島、小豆島では、それぞれ違った形の美しさを感じました。
自然と人の営みが重なり合うことで生まれる調和の美それこそが瀬戸内の魅力だと思います。
静かな島の時間の中で、“人と自然がつくる美”を心から感じることができました。
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「GOOD NATURE COMPANY 100」プロジェクトは、持続可能な社会の実現に向けた企業の活動内容を、おもしろく、親しみやすく、その物語をまとめたデータベースです。
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