【株式会社アクポニ】サステナブルトランスフォーメーションを支える技術 #02

株式会社アクポニの基幹技術であるIoT生産管理システムは、持続可能な農業の未来を支える重要な要素だ。

この技術は、リアルタイムで水質を監視・管理し、生産コストを削減すると同時に、安定した収穫を可能に。

さらに、資源循環の可視化によって、地域や地球規模での環境保全にも貢献し、持続可能な生産体制を実現している。

従来の農業を革新し、効率化と持続可能性を両立するシステムチェンジへの挑戦。この技術を基盤に、株式会社アクポニは新たな農業のスタンダードを創り出しています。

濱田プロフィール_正方形
濱田健吾

株式会社アクポニ 代表取締役
宮崎県生まれ。商社や外資系IT企業で新規事業を担当。2014年にアクアポニックスの普及を目指す「アクポニ」を創業。2017年より渡米し、研究開発に従事。2019年に帰国後、神奈川県藤沢市でテクノロジーやデータを活用した生産実証を開始。現在、①最適なアクアポニックス生産設備の構築と栽培管理、②資源循環の可視化、③バリユーチェーンの最適化、の3つを軸とした技術開発と導入支援へ尽力している。

IoT技術で生産コスト削減—株式会社アクポニが挑むサステナブルなシステムチェンジ

■レゴのように拡張できる、エネルギー循環を生み出すテクノロジー

そもそもアクアポニックスは単なる食料生産システムとしてだけではなく、地域の資源やエネルギーを次のサイクルに繋げていくためのパーツとしても考えています。

たとえば、養殖と水耕栽培を組み合わせた基本の循環に、工場から出る廃熱や廃棄物を新たなエネルギーループとして加えることで、システム全体がどんどん大きくなり、効率も上がっていく。つまり、どんどん要素を組み合わせていける、まさに「レゴ」みたいなものなんですね。

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こうした柔軟性があるからこそ、異業種からも参入しやすく、挑戦者が増えているんです。

僕たちが開発しているテクノロジーは、単なる農業システムに留まらず、いわば「循環テクノロジー」として考えています。これを学校に設置すると、その校内で資源やエネルギーの循環が始まるんです。

同様に、商業ビルや町に導入すれば、それぞれの場所で資源の循環が広がっていく。

そうすると、たくさんの人が興味をもって楽しもうと、その循環の環に加わってくれます。そんなふうに、循環を生み出すツールとして活用しています。

例えば、このシステムを町全体に設置してみると、その町の中で資源の循環がどうなるかを想像してみてください。資源やエネルビーがスムーズに循環し、そこに人が加わることで、持続可能なコミュニティの実現に一歩近づくんです。

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このテクノロジーはまるで「レゴブロック」のようなもので、いろんな要素を組み合わせて、大きなエネルギー循環を作り出すことが可能なんです。

例えば、IHIさんの水素工場での事例がその一例です。このシステム自体が「循環のパーツ」になっていて、地域や企業が持つエネルギーや資源を効率よく循環させるのに役立っているんです。

■自社開発のIoT生産管理システム『アクポニ栽培アプリ』

さらに、私たちが自社開発したアクアポニックス向けIoT生産管理システム『アクポニ栽培アプリ』は、アプリでもあり、センサーでもあるんです。

 

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アクアポニックス農法において、微生物の働きを維持することが重要です。水質管理がこの技術のコアになります。

水質を適切に維持管理しないと、微生物が活性化せず、良好な環境を作ることができません。この水質の維持管理は、いろんな要因が絡むので、どんな場所や規模でも継続して行うのが非常に難しいんです。

そこで、私たちは「アクポニ栽培アプリ」というものを開発しました。ここに我々の技術が集約されています。

このアプリは、生産現場から収集できるすべてのデータを記録します。人が行った作業内容、気温や日差しの強さなどの環境データ、さらにはその時の生体情報など、これらをデジタルデータとして集計し、レポートを出力します。

こうすることで、生産者は何が良くて、何が悪いのかを把握しやすくなり、原因分析や予測が行いやすくなります

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さらに、水質管理もこのアプリで行っており、「ここが良くない」といった情報が表示されるので、それを確認しながら調整していく形になっています。

スマートフォンからもそのデータを確認でき、異常値が出た場合はアラートが飛んできたり、色が変わって危険を知らせたりします。これでリアルタイムに状況を把握し、すぐに調整が可能になるんです。

 

■なぜデジタルデータでの管理が必要なのか?

グローバルに見ても、デジタルデータでアクアポニックス農法を管理するシステムを築いている会社はないと思っています。

この発想のきっかけは、農業の管理方法について考えたことから始まります。今の一次産業の生産指導というのは、現場に行かないとできないというのが一般的な通説です。

たとえば、指導者が新幹線に乗って現場に来るなんてこともよくありますが、私が各地を飛び回っていては、とてもこれが広がることはないと思ったんです。

私が現場に行けば状況を把握できますが、現場に行かなくても畑の状況を理解するためには、こういったテクノロジーが必要です。今では異業種の方でも、月に1回このレポートを見て1時間の会議だけでアクアポニックス農業ができるようになっています。

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IoTで可視化する持続可能なプロセス—株式会社アクポニが描く次世代農業の挑戦

■アクアポニックスの環境貢献、どうやって数値化しているのか?

「アクアポニックスは循環型で環境に優しい」と言われていますが、実際にどれだけの効果があるのか、具体的にわかっているケースは少ないんです。でも、私たちの取り組みでは、その効果をリアルタイムで数値化しています。

CO2の削減量や窒素の利用効率、さらにはどれだけ節水できたかを数字で把握できるんです。専用のアプリを使って、指定した期間のすべてのデータを収集し、数値化する仕組みになっています。

数値化ができると、実際にどれだけ環境に貢献しているのかが明確になります。それが、僕たちのブランド化にも非常に重要な要素になっています。

循環型で環境に良いと言われても、具体的なデータがなければ、どれくらい効果があるのかはわかりません。

数値として現状が把握できるからこそ、効率化の道が開けるんです。現状がわからないままでは、どこを改善すべきかが見えてこないですから。

この数値化のプロセスが、アクアポニックスや他の一次産業にとっても、今後ますます重要になってくると感じています。

さらに、数値化が進めば、外部へのPRにも活用できます。数値として成果を示すことで、より多くの人が興味を持ち、その取り組みに関わってくる。そうした好循環が生まれるんです。

「環境に良い」という言葉だけだとふわっとしてしまいがちですが、こうして具体的な数値で示すことができると、説得力が増します。「本当に効果があるのか?」という疑問を持つ人たちにも、自信を持って説明できるんです。 

今年4月に富士工業さんと共同で行った実証実験の結果では、例えば、廃棄される窒素を99%再利用し、気流制御でエアコンの電力使用量を76%削減できました。

こういった具体的な成果を数値で示せることが、今後のPRやブランド価値の向上に大きく繋がるでしょう。

 

#03に続きます。

 

写真提供:株式会社アクポニ

 

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