地域の電力会社は本当に安全なのか?那須野ヶ原みらい電力の現在と災害対策

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おかげさまで那須野ヶ原みらい電力は設立から2年半ほど経ちました。

鈴木大介 / 鈴木電機株式会社および那須野ヶ原みらい電力株式会社 代表
鈴木大介

鈴木電機株式会社および那須野ヶ原みらい電力株式会社 代表
1979 年那須塩原市生まれ。武蔵工業大学(現:東京都市大学)卒。博士(工学)。 2017年 鈴木電機株式会社の代表取締役社長に就任。 2022 年 那須野ヶ原みらい電力株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。特定非営利活動法人 1000 年の森を育てるみんなの会の代表も務める。

須野ヶ原みらい電力

電力会社を運営していく中で、「地域の電力会社は信頼できるのか?」や「災害時に停電したらどうなるの?」といった疑問や不安の声をよくいただきます。

電気は生活に欠かせないものだからこそ、信頼性や災害時の対応に対する不安は大きいでしょう。

今回は、那須野ヶ原みらい電力の現状をお伝えするとともに、災害時に備えてどのような対策を進めているかについて紹介します。

那須野ヶ原みらい電力のいま

地域でエネルギーを地産地消する。

那須野ヶ原みらい電力はエネルギーの地産地消を目指し、小学校や公民館など、那須地域内の公共施設へ電力を供給しています。

現在、供給の基盤は那須塩原市のゴミ処理場で発電された電力です。市内の水力発電所「折戸発電所」の電力や市場で購入した電力も組み合わせています。

那須野ヶ原みらい電力

折戸発電所

次のステップでは、再生可能エネルギーへのシフトを目指しています。地元企業や一般家庭への電力供給の実現に向けた取り組みも進行中です。

第一歩として那須塩原市の青木地区限定でゼロカーボン街区構築事業をスタートしています。

ゼロカーボンとは:「セロカーボン」(Zero Carbon)は、一般的に二酸化炭素(CO2)の排出をゼロにする、または排出量を相殺して実質的にゼロにするという考え方や目標を指します。

青木地区でのゼロカーボンの実現を目指して

那須野ヶ原みらい電力

脱炭素の取組みがなぜ青木地区限定なのか。

その理由は、青木地区が2022年に環境省から『脱炭素先行地域』に指定されたことにあります。

『脱炭素先行地域』とは、2050年のカーボンニュートラル達成を目指す取り組みを、20年早めた2030年までに実現するためのモデル地域のことです。

全国で82箇所が選定されており、酪農が盛んな地域である青木地区も、その一つに選ばれました。

青木地区では酪農施設をはじめ、地域の事業所や一般住宅への太陽光パネルと蓄電池の設置事業を進めています。将来的には家畜のふん尿を活用したバイオマス発電所や、小水力発電所の設置も検討中です。

もちろん、脱炭素プロジェクトは決して順調に進むことばかりではありません。数多くの課題に直面しながら那須塩原市と協力しながら、日々試行錯誤を重ねています。

このプロジェクトが成功すれば、那須塩原市の主要産業である酪農業の中心地、青木地区で生産された乳製品を「ゼロカーボンでつくられた乳製品」としてブランド価値を高めるプロモーションが可能になります。

ふるさと納税の返礼品に採用したり、青木地区の道の駅を拠点に発信したりすることで、地域の価値を広く伝えていけるのではないかと考えています。

那須野ヶ原みらい電力が考える災害対策

続いて、現在取り組んでいる災害対策についてお話します。

地震などの災害が起こったときに、電力がしっかりと供給されるのかどうかは、利用者さまにとって非常に気になるところだと思います。

那須野ヶ原みらい電力は、“地域ごとの防災力の向上”を何より大切に考えています。

現在、一般的な電力供給の仕組みは、中央で発電した電気を電線を通じて広い範囲に届ける形が主流です。

ただ、この仕組みには、大規模な発電所が停止したり、電線が被害を受けたりすると停電が発生してしまうリスクがあります。

須野ヶ原みらい電力

私たちは万が一の事態に備え、それぞれの地域で非常用の電力を確保できる体制を整えることが重要だと考えています。

その一環として、現在「マイクログリッド」の構築を進めています。

マイクログリッドとは、分散型電源を活用した小規模な電力供給システムのことです。

地域内に小規模な発電施設を設けることで、災害で主要発電所からの電力供給が止まっても、地域内の家や施設が電気を使い続けられる仕組みです。

青木地区ではこの仕組みの整備が既に始まっています。青木地区以外でも地域のレジリエンスを強化するため、市内の避難施設に太陽光パネルと蓄電池を設置する取り組みを進めています。

須野ヶ原みらい電力

現在のところ、南公民館、いきいきふれあいセンター、にしなすのスポーツプラザ(那須塩原市市内)の3か所に設置を完了しています。

これにより、これらの避難施設では災害時でもスマートフォンやPCの充電、照明、テレビの利用など、基本的な電力を約3日間確保する体制を整えています。もちろん平時は太陽光、蓄電池の利用により、再エネ電源の活用を行っています。

那須野ヶ原みらい電力のこれから

那須野ヶ原みらい電力の取り組みは、まだ始まったばかりです。

まずは青木地区での脱炭素化の実現、そして災害時のレジリエンス強化を推進し、そこで得られた知見やノウハウを市内全体に広げていきたいと考えています。

私たちの最終的な目標は、再生可能エネルギーによるエネルギーの地産地消を実現し、そのエネルギーによって得られた利益を地域に還元すること。

地域の発展に寄与しながら、持続可能な地域づくりに貢献していくことです。

那須野ヶ原みらい電力

ただ、電力会社の取り組みやビジョンは伝わりづらいと感じています。

「みらい電力がどんなことをしているのか」や「何を目指しているのか」その全貌が見えにくいのではないでしょうか。

だからこそ、こうした取り組みや考えをnoteを通じてお伝えすることで、少しでも那須野ヶ原みらい電力のことを知っていただけたら嬉しいです。

再生可能エネルギーの活用については、以前お話したように畜産バイオマスや水素発電などさまざまな方法が考えられます。それぞれ課題はありますが、持続可能な那須の未来にとって最適な方法を模索しています。

持続可能な地域づくりのために。これからおこなうべきエネルギーを起点とした2つの取り組み

これからも那須野ヶ原みらい電力は地域の事業者や那須にお住まいの皆さんの声を大切にしながら、一緒に考え、皆さんのニーズに合った電力供給を実現していきたいと思っています。

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