人と人とのつながり ~目に見えない美~

はじめに

こんにちは!私たちは島根県立大学生です。

私たちは地域理解研修という授業の一環で、今回広島県福山市と尾道市を訪れました。 

そして、今回はこの2つの市を訪れ、感じたことをブログにしました。 

「美しさ」とは? 

このブログのテーマは、「美」です。 
「美」というと、目に見える美しさを想像する方が多いのではないでしょうか?
私たちもはじめは「美=目に見えてわかる美しさ」と捉えていました。しかし、訪れた場所で出会った人々にインタビューしていく中で、美しさは目に見えないものもあることに気づきました。

その目に見えない美しさの中でも今回は「人と人との繋がり」に注目し、この繋がりの美しさについてこのブログを通して皆さんにお伝えしていきたいなと思います。 

DENIM SCHOOL HITOTOITO│人と糸。

まず福山市では「DENIM SCHOOL HITOTOITO│人と糸。」を訪れました。 

ここのデニムスクールではデニムパンツを作るために必要な専門知識や工芸用ミシンを使った縫製技術を短期間で学ぶことができます。縫製のプロによる実技指導を受け、卒業時には自分のサイズに合わせたオリジナルデニムパンツを、縫い上げます。 

10日間講座では定員6名で終日9時から16時まで縫製に取り組み、参加費用は6万円(材料費、授業料込)と少し高く感じるかもしれませんが、世界最高レベルのデニム生地を生産している「かいはらデニム」などから生地を仕入れているので、本来はこの価格で提供できませんが、ボランティアでやっているからこそ比較的安いこの価格で体験することができます! 

ちなみに「かいはらデニム」はあのユニクロジーンズの生地を手掛ける、世界に誇るデニム生地メーカーなのです! 

ここで私たちは株式会社ディスカバーリンクせとうちの黒木美佳さんにお話を伺いました。 

人と糸。では、常石造船の従業員がかつて捨てていた作業服を回収し、「REKROW(リクロウ)」というプロジェクトを始めました。このプロジェクトは使わなくなった作業着(デニム)を再利用する取り組みです。 

「デニム」を通した「人と人との繋がり」
~デニムに残る家族の思い~

造船会社の作業着を解体したものを展示しているスペースがありました。 

そこでデニムに注目すると上半身には白い跡があり、これは命綱の跡であることを教えていただきました。 

これらを洗濯する際には、ポケットからお守りが出てくることが多くあり、危険な場所で働く作業員の家族が安全祈願のために渡していたものであることが想像できます。 

このようにかつてデニムをはいていた人たちの背景を感じることができ、デニムを通した人と人との繋がりを伺えることができました。 

私はデニムに命綱の跡がつくほど危険な場所で働く作業員を心配し、安全に帰ってきてほしいと思う家族の思いがとても美しいと感じました。 

~地域の人々の支え~

 また黒木さんにお話を伺うと、地域の人とデニムスクールの人と人との繋がりも見えてきました。


デニムスクールを運営するうえで、地域の人の支援や協力は必要不可欠になります。具体的にはデニム生地を安く仕入れさせてくれたり、使っていない糸や余った材料などを譲ってくれたり、ミシンの調整を出張費なしで見てくれるなどがあげられます。 

 

このように地域の人のおかげでデニムスクールは運営することができます。 

黒木さんは「地域の人に支えられながら事業を進めていくことで福山という地域のものづくりのすごさや地域に引き継がれてきたものづくりをつたえていきたい、またこの地域で新たな取り組みを始めたい」という気持ちが更新され続けています。 

黒木さんだけでなく、工場を引退してデニムスクールの先生として働く人たちも訪れる生徒から影響を受け、ここで「生きがい」を見つけるようになりました。つまり自分が人に向けて教えていく中で自分にもこの地域の良さの再発見につながるのです。 

 

以上のように福山編ではデニムをはいて働いていた人たちとその家族の繋がり、デニムスクールと地域の人達の繋がり、またデニムスクールの先生と生徒という3つの人と人との繋がりを感じることができました。
 

これらはその人たちの思いなどが想像でき、目で見ることができない、人々の美しい繋がりであると感じました。 

尾道編 
尾道デニムショップ 

まず尾道では、「尾道デニムショップ」を訪れました。

~尾道の人々が育てる「リアルユーズドデニム」~

この「尾道デニムショップ」では尾道で働く人達に実際に一年間デニムをはいて働いてもらい、「リアルユーズドデニム」を「育てる」という世界に類を見ないプロジェクトに取り組んでいます。 

詳しく説明すると、尾道で働く人たちに新品のデニムを一年間はいてもらい、毎週金曜日に尾道デニムショップのスタッフの方がお店を訪れ、デニムを回収し洗濯することで365日デニムをはいてもらう仕組みを確立しています。 

尾道デニムショップの店内には多くのデニムが展示されており、そのデニム一つ一つに職業が書かれたタグが書かれています。職業は大工や鉄工所など尾道で働いている様々な職種の方たちが一年間はいていたデニムを見ることができます。

 

 

この写真に注目するとサイズがすべて同じで、自分のサイズがないと不安になる人がいるかもしれません。しかしこれには理由があって、購入する人が見やすくなるようにタグの位置やサイズが工夫されています。(ちゃんと他のサイズは下にまとめられているのでスタッフの方に聞いてみてください!) 

~尾道で働く人たちの背景を伝えたい~

1年間デニムをはいて育てた「リアルユーズドデニム」はかつてはいていた人の癖がデニムに刻まれて、そこに魅力を感じて購入する人たちがここを訪れています。 

またここではオンラインやEC販売は行っておらず、購入するには現地に行って買う必要があります。ここにこだわる理由は何でしょうか? 

答えは実際にお店に来ていただいて、デニムを育てた尾道で働く人たちの背景を伝えたいという想いがあるからです。 

~「世界に一つ」のダメージジーンズ〜

 

生活しているとダメージジーンズをはいている人を見たことがあるでしょう。ダメージジーンズは新品のきれいな状態のジーンズから汚れや傷をつける工程を経て作られています。

一方でリアルユーズドデニムは人工でつけられた傷ではなく、はいていた人の背景が想像できるデニムでそこに魅力があります。

例えば鉄工所で働いている人が履いていたデニムではポケットにくっきりとスマホを入れていた跡が残っています。 

このように購入者とはいていた人の背景を伝えるスタッフの繋がりがこの取り組みを通して生まれています。 

また、この繋がりのほかにもデニムを購入した人とデニムを育てた人の繋がりもあり、両者の交流会を開催しています。デニムを育てた人と購入者の背丈や働いている場所が同じなど両者の共通点がみられる場合も多くあるそうです。普通なら関わることがなかった二人がデニムを通して共通点を見つけ、親交を深めるのも素敵ですね! 

実際にリアルユーズドデニムを見て、「デニムを履いていた人がどのような職業なのか」、「このダメージはどのようについたのか?」などを想像することなど、いろいろな楽しみ方がありました! 

リアルユーズドデニムに関わる人達

この他にももう一つつながりがあります。それはデニムショップのスタッフとデニムを育てている尾道の人達です。先に述べたように、育てているデニムは一週間ごとに回収し洗濯するため、スタッフと尾道の人達との関係は時を重ねるごとに深くなっていきます。 

~プロジェクトの主催側~

そこで尾道デニムショップの店長である元廣京哉

尾道デニムプロジェクトに参加している人達を紹介していただき、インタビューを行いました。まず、元廣さんはかつて銀行員として働いていましたが、地域や人との繋がりを感じられる仕事をしたくてデニムショップを始めました。 

ここからはスタッフ、プロジェクトに参加している方の2人を同じ内容でインタビューし比較していきます。 

そこで一緒に働いている成瀬立桂さんにインタビューを行いました。

成瀬さんは東京で働いていましたが、尾道の開放的で住みやすいという魅力から移住し、尾道に来てから紹介を経て今のデニムショップの仕事に流れ着きました。働いている場所の制服として当たり前にデニムを着用しており、このプロジェクトの魅力は尾道の人と関わることで生まれる出会いがあるところにあります。具体的には漁師さんに安く牡蠣を譲ってもらったり、柑橘農家の人に果実をもらったりなど優しくしてもらい、普通ではできない繋がりを経験できることをうれしく感じています。 

制服としてデニムを着用している一方で私服ではデニムをおしゃれ着として扱い、色落ちに気を付けてデニムを育てているらしいです。

 

ちなみに元廣さんは私服のデニムを色落ちさせるためによく洗濯するらしく、この二人の間でも違いがあって面白いですね! 

~プロジェクトの参加者~ 

次に元廣さんに紹介していただいたデニムをはいて仕事している向酒店の向井祐功さんにインタビューを行いました。

向井さんは以前はいていた作業着がぼろぼろになったときにこのプロジェクトへの参加を持ち掛けられ、作業服を提供してくれることはありがたいため、参加しました。

このプロジェクトに参加したことで、自分が育てたデニムを購入した人が実際に酒屋に来てお酒を購入してくれるといったようなデニムを通した横のつながりが増えるようになりました。今後は、このプロジェクトに参加しつつデニムをはき続け、デニムの種類や商品の数を増やしながら根本は残しつつ変化していってほしいと期待していました。

以上より、両者それぞれにこのプロジェクトに対して感じる魅力があり、共通しているのは繋がりが増えることでした。 

このようにデニムを通してスタッフとお客さん、スタッフと尾道の人たち、尾道の人たちとお客さんといった3つの人と人との繋がりを見つけることができました。 

今後は、元廣さんはデニムを通してさらに多くの尾道のお店を紹介し、実際に訪れて尾道の魅力に気づいてもらうことを目指していきたいと言っていました。 

私たちもまだ「リアルユーズドデニム」を育てている尾道の人の一人にしか出会うことができていないので、デニムショップで他の育てた人の背景を聞いて、実際にその人に会いに行き、「リアルユーズドデニム」にできた汚れや傷の魅力を深掘りしていきたいなと思います! 

最後に 

今回の取材を通して、人と人とのつながりってこんなにあたたかくて面白いんだと改めて感じました。デニムという一つのモノから、いろんな人との関係や交流が自然に広がっていく様子は、日常ではなかなか味わえないような貴重な体験です。普段なら通り過ぎてしまうような出会いや会話も、この場所ではふっと生まれていました。 

もし、少しでも興味を持ってもらえたなら、ぜひ実際に尾道に足を運んでみてほしいです!!街を歩くだけでも、並ぶお店や人柄、その土地ならではの空気感を感じられます。今回紹介したデニムスクールやデニムショップにも、温かい雰囲気や人の思いがぎゅっと詰まっています。 

ここでの時間が、みなさんにとって人と人とのつながりの美しさや、街の魅力に気づくきっかけになればうれしいです。 

最後まで読んでいただきありがとうございました!! 

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